壱拾章:微動

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「…馬鹿強いのは事実やな。仕事に関しても確かに卒ない」 山崎は齋藤が人をここまで評価しているのを見たことがなかった。 賞賛されているのが、楓以外の人間であれば山崎は素直に受け入れていただろう。しかし、相手はあの楓。当然素直に認められるはずがない。 「山崎さん、山崎さん!鼻にまで皺よってますよ!」 「何かあったのか?」 「…いや、猪女のあの勝ち誇った顔が頭に浮かんで」 「それは最悪ですね」 「そうなのか?」 山崎の皺の原因が自分の発言だとは露知らず、齋藤は若干黒いオーラを出しながら俯き加減の二人を不思議そうに観察していた。 「そもそも、あの人は一体何者なんですかね?」 しばらく俯いていた沖田が唐突に質問を投げかけた。
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