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「あはは。そんなに畏まらないで欲しいな。昔からの付き合いじゃないか?」
「え…でも、やっぱり今は副長という立場ですし、昔の様には…」
「副長なんてただの鎧さ。中身は山南敬助という普通の人間だよ。そして、今はその鎧を脱いで君と話をしたいんだ」
目を細めて優しい笑顔で諭す山南に、藤堂は小さく頷いた。
「へへ!じゃあお言葉に甘えて!」
藤堂は、ピンと伸ばしていた背筋から力を抜いて、正座していた足を中庭に向けて思いっきり投げ出した。
「はは。それがいい!それで?何かあったのかい?」
姿勢を崩した藤堂の姿を満足そうに眺めながら、山南は尋ねる。
「本当に大した事じゃないんです…。
実は先刻、道場で稽古中に土方さんの小姓がやって来まして、土方さんが俺を呼んでいると…」
段々小さくなっていく藤堂の声。
傍から見ても明らかに恐れを感じていることがわかる。そんな藤堂の話を聞いて、他の隊士とは違う意味で山南は驚いていた。
「俺何か悪いことしたのかなぁ?」
縁側から見える空を睨みながら、髪を掻き回して思案する藤堂。
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