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「私が思うに、その呼び出しはそう悪いものではないと思うよ?」
「…へ?」
正に、今の藤堂にとって救いの一言。
どうやら、山南には何か思い当たる節があるようだ。
「うん…。まあ、考えようによっては良くないかもしれないが」
「ええ~…?!」
山南の一言一言に藤堂の気持ちは大きく揺さぶられる。
「ああ、はっきりしなくて悪いね。でも、これは私の勝手な憶測だから安心しろとは言えないんだ」
「山南さん、何か思い当たる事が?」
「…うん。多分、土方君が君を呼んだ理由は、これからの新撰組に大きな影響を及ぼす大務を任せるためだと思うよ?」
(そして、恐らくもう一隊は一番隊を選ぶ)
「新撰組に影響する…大務…?」
重厚さを持つ山南の言葉に、藤堂は生唾をゴクリと音を立てて呑む。
「ああ。だから、そんなに怖がる必要はないんじゃないかな?」
山南は隣に座る藤堂の肩を励ますように優しく叩いた。
「はい!!」
藤堂は、山南からの励ましを受け、改めて土方の部屋に行く覚悟を決めた。
その表情にはすでに恐怖の色は無い。
「山南さん!ありがとうございました!俺、行ってきます!!」
すっと立ち上がった藤堂は、山南に深く頭を下げてはきはきとした声で感謝の気持ちを伝えると、力強い足取りで土方の部屋へ向かった。
「いってらしゃい」
山南は座ったまま、さっきよりも堂々として見える藤堂の背中に手を振る。
「…ありがとうを言うのは、私のほうだよ」
中庭に咲く一輪の花を見据えたまま、山南は消えそうな声で呟いた。
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