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黒江はそそくさとケーキの箱に手を伸ばし、
開く。
「きゃーーー!」
またもや歓喜。
「ならんでもならんでも売り切れだったのに!どーしたの?」
実はねーと笑う司。
「今日、お得意様のところに杉田課長といったんだけどー.... そこの方にいただいたのー!ほんとはあたしと杉田課長の分なんだけど、課長、デザートは別にあるからとかなんとか。.... ま、譲ってくれたからさ、食べようよ。」
「うれしぃーありがとぉーー!」
黒江はもう、目の前の輝かしいモノに体の五感全てを奪われていた。
憧れのチーズスフレだぁー
プラスチック製のスプーンをとりだし、
「「いただきまーす!」」
二人でいそいそとケーキにスプーンを差し込む。
口にいれ、その甘酸っぱさとふわふわで、とろける舌触りに、
「....!!!おいしーーー!!!」
甘く、美味しい一時は一瞬にしてさるもので。
黒江の名残惜しそうなスプーンはすでに欠片も残されていないケーキのラベルの上をいったり来たり。
「あーん、もっと食べたーーい。」
司のスプーンは自身の口にくわえられたまま。
「今回は特別だからねー。次はもうないかも.... 。」
「えーーー!こんな美味しいの食べちゃったらもう忘れらんないよーーー。」
美味しいものは、一時は幸せになれるが、それが続かないとなると毒になってしまう。
チーズケーキ好物なんだよー
うーっと黒江はすぐおとずれた悲しみに浸る。
「ちょっと、そんなすぐに悲しまないでよ!美味しさにひたってよ!今は!」
ばしんと黒江の肩をひっぱたく
「いった。.... だってー美味しすぎてぇー」
「はいはい、じゃ、も、そろそろ帰ろうか。」
食べたゴミをすて、デスクの上にある私物をまとめる。
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