ブレイクアウト

6/6
前へ
/6ページ
次へ
――不快な目覚ましの音が部屋に鳴り響く。 目覚まし時計を叩くと、音が鳴り止んだ。 8時か。 両手で目をこする。今のところ違和感はない。記憶もあるし、視力も聴覚も残っている。何か特別見えるわけでも聞こえるわけでもなかった。 カーテンの隙間から差し込む光も、ハッキリと認識できた。 「さて、ご飯でも食べよう」 意味もなくそう呟く。うん、声も出るな。 どうやら致命的な喪失はしていないようだ。 朝食を済ませればすぐに出発できるように、ショルダーバッグを抱えてリビングへ向かう。 本しか入っていないショルダーバッグの中身は軽い。 施設に生活用品、衣類があるらしいから、こんな軽装でも大丈夫なんだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加