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――不快な目覚ましの音が部屋に鳴り響く。
目覚まし時計を叩くと、音が鳴り止んだ。
8時か。
両手で目をこする。今のところ違和感はない。記憶もあるし、視力も聴覚も残っている。何か特別見えるわけでも聞こえるわけでもなかった。
カーテンの隙間から差し込む光も、ハッキリと認識できた。
「さて、ご飯でも食べよう」
意味もなくそう呟く。うん、声も出るな。
どうやら致命的な喪失はしていないようだ。
朝食を済ませればすぐに出発できるように、ショルダーバッグを抱えてリビングへ向かう。
本しか入っていないショルダーバッグの中身は軽い。
施設に生活用品、衣類があるらしいから、こんな軽装でも大丈夫なんだ。
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