ー第一話ー

3/6
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
師範「親戚ぃ?」 明らかに不審そうな目で大久保さんを見つめる師範。 私たちは結局合宿所にやってきていた。 あやめ「たまたま京都に来てたらしくて…。それが、財布を盗まれたみたいなんです。 ホテルももうチェックアウトしたって言うので、行く宛がないんです。 私の部屋で構わないので、泊めることはできませんか?」 師範は大久保さんから一切視線を外さずに私の話を聞いていた。 大久保さんは何も言わずに、そっぽを向いて成り行きを見ている。 師範「……本当か?親戚にしては…似てないな。」 あやめ「えっと、それは…。」 利通「親戚故に容姿が似る、というのは必ずしも理ではないと思うが。」 は?と師範は首を傾げた。 (お、大久保さん…!) すると大久保さんは師範に向き直って、 利通「…失礼。だが姪の言うことは事実です。 私の不注意でこのような事態を招いてしまった。 ご迷惑なのは重々承知しておりますが、どうか、泊めていただくことは叶いませんか。」 すごく丁寧な態度で大久保さんは師範に頭を下げた。 師範もその態度に感服したようで、 師範「……仕方ない。妃華の部屋からはなるべく出ないという条件でなら、構いません。」 利通「恩に着ます。」 と、大久保さんはまた頭を下げた。 私は師範にしっかり釘を刺されて、大久保さんを自分の部屋まで案内した。 利通「…嘘が巧くなったな。」 あやめ「どっちがですか。」 などと言いながら。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!