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師範「親戚ぃ?」
明らかに不審そうな目で大久保さんを見つめる師範。
私たちは結局合宿所にやってきていた。
あやめ「たまたま京都に来てたらしくて…。それが、財布を盗まれたみたいなんです。
ホテルももうチェックアウトしたって言うので、行く宛がないんです。
私の部屋で構わないので、泊めることはできませんか?」
師範は大久保さんから一切視線を外さずに私の話を聞いていた。
大久保さんは何も言わずに、そっぽを向いて成り行きを見ている。
師範「……本当か?親戚にしては…似てないな。」
あやめ「えっと、それは…。」
利通「親戚故に容姿が似る、というのは必ずしも理ではないと思うが。」
は?と師範は首を傾げた。
(お、大久保さん…!)
すると大久保さんは師範に向き直って、
利通「…失礼。だが姪の言うことは事実です。
私の不注意でこのような事態を招いてしまった。
ご迷惑なのは重々承知しておりますが、どうか、泊めていただくことは叶いませんか。」
すごく丁寧な態度で大久保さんは師範に頭を下げた。
師範もその態度に感服したようで、
師範「……仕方ない。妃華の部屋からはなるべく出ないという条件でなら、構いません。」
利通「恩に着ます。」
と、大久保さんはまた頭を下げた。
私は師範にしっかり釘を刺されて、大久保さんを自分の部屋まで案内した。
利通「…嘘が巧くなったな。」
あやめ「どっちがですか。」
などと言いながら。
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