曖昧アフェクト(NK)

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「いやいやっ!かめのリスクより、俺のが危険度高ぇし」 それが、どうかした?とでも云うように、かめはにっこりと笑う事で。 俺の反論を、軽くあしらう。 つまり、お前と云う存在が欲しいなら、それなりの対価が必要で。 しかし、対価を支払っても手に入る保証はない…と? 「なかまる。また今度…、ね?」 扉に手を掛けた所で、顔だけを此方に向けて。 流し目に、含みを持たせた言い回しのかめを一言で表すのならば。 「うーわ。タチ悪ぃ…っ!」 思わず洩れた、これに尽きる。 出ていっても尚、かめの存在は部屋に色濃く残されていて。 枕に置き去りにされた髪留めや、乱れたシーツ。 ふわりと漂う甘いバニラの香りに、首筋が疼いたように熱を持つ。 安泰を求めるのであれば、決して侵してはいけない領域。 元メンバーのカノジョ……いや、彼氏?愛人? まあ、とりあえず。普段の俺なら、そんな危険な橋は渡らない。 「あー…。ヤバイとこに、手ぇ出しちゃったなぁ」 かめの色香に誘われたのも、多少はあるけれど。 やはり大きな要因は、辛そうなかめを見たくなかったから。 「放っとけないでしょ。かめ、だし…」 こんなのたつやからしたら、ただの言い訳なのだろうが。 不幸中の幸いなのは、明日はあのコーナーがないと云う事。 もしあったら、まじでたつやに顔向けできない事態になった……かもしんない。 かめの持つ危うさに、煽られたのは庇護欲か嗜虐心か。 縋り付いてくる指先を、手に取ったのか、取らされたのか。 張り巡らされた策略に、捕らえられたのはどちらか。 全ては、曖昧なまま。 ―― 俺とかめの関係も、また然り。 .
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