君の風情と僕の色情[AK]

2/6
前へ
/23ページ
次へ
「じぃん、どこー?…あ、いたいた」 夏真っ盛り。日々の酷暑に因り、クーラーが手離せない今日この頃。 出来る限り。余程の用事がない限り、極力外出はしたくない。 バイトが休みとなれば、快適な室内でダラダラ過ごすのが日常だった俺に。 「ね、お祭り行こ?」 余程の用事、が飛び込んできた。 黒に近い濃紫の浴衣に、少しくすんだ色合いの紅い帯。 形も柄も男物なのに、カズヤが着ると、どこか女の子っぽい。 なよなよしてる…とか、そんな悪い意味ではなく。 醸し出す雰囲気が、たおやかなのだ。 「ふは。あかにし、見とれすぎ。可愛いっしょ、俺のかずちゃん」 カズヤの後ろから顔を出し、的確なツッコミをするうえだ。 見とれてたのは認めるし、カズヤを可愛くしてくれたのは有り難いが。 断じて、お前のカズヤじゃねえ! 「ね、似合ってる?」 そんな俺の独占欲など、どこ吹く風なカズヤは満面の笑みで。 くるりと、軽やかに一回転して魅せる。 「うん、似合うよ。すっげー可愛い」 「へへっ。ありがと」 後ろを向いた時に見えた、白い項にドキッとしたのは内緒。 祭なんか行かずに、今すぐ押し倒してぇ…と思ったのも内緒。 「ほら、じんも早く着替えて」 別の薄灰色の浴衣を手に、期待に満ちた目で俺を見つめるカズヤには悪いが。 「いや…、俺はいいや」 浴衣を着る気は、ない。 一応花火は上がるとは云え、近所の小規模な祭だし。 カズヤの後ろで、うえだが俺に着付けるのは面倒臭い…って顔してるのもあるし。 「えー、なんで?絶対カッコイイのに!」 「あはは。また次の機会に、な?」 それに…。カズヤにとって、初めての祭なわけじゃん? ってことは、俺は動きやすい格好で行った方が得策だと思うんだよね。 .
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

199人が本棚に入れています
本棚に追加