君の風情と僕の色情[AK]

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「ほら、かずちゃん。お祭り始まっちゃうし、行っといでよ」 「……わかった」 うえだに宥められ、かなり渋々だが浴衣を置いたカズヤは。 頬を膨らませ、薄い唇を尖らせて、分かり易く不服だ…と体現していて。 カラコロと涼やかに響く下駄の音すら、それに混じる微かな金属音すら。? 「じんってば、ふぜーがないんだから」 やはり、どことなく不機嫌だ。 無理して、難い言葉で俺を責めるカズヤのご機嫌を取るべく。 財布の有無をデニム越しに確認し、少し先を歩くカズヤと肩を並べた。 「かぁず。好きな物、買っていいから機嫌直して?」 「……なんでも?」 少しの沈黙の後。ちらりと俺を見上げ、小首を傾げるカズヤは。 「うん。好きなだけ、買いなよ」 この一言で、きゅっと口角を上げる。 殺人級に可愛い笑顔ってのは、こういうのを言うのだろう。 「やった。じん、大好きっ!」 ぐはっ。やることなすこと、可愛すぎるんですけど。 きゅんきゅんしすぎて、心臓痛いっつーの。 そうこうしている内に、着いた祭会場。 この辺り一帯の人間が、この場所に居るのではないか。 そう錯覚する程に、ごった返していて。 「カズヤ。迷子になんなよ?」 この状況を利用すれば、堂々と手が繋げるな…とニヤけていたら。 「平気だし。子供扱いしないでよ」 祭が物珍しいカズヤは、先々と屋台に向かっていく。 ヨーヨー釣り、くじ、射的…等々。 その一つ一つに一喜一憂し、楽しむ姿は、幼い子供そのもので。 「おじさーん、今当たった!」 「ははっ。倒れなきゃダメなんだよ、お嬢ちゃん」 おまけに、屋台のおじさんには、女の子と間違われてるし。 「むー、当たったのに」 つか。突っ込むとこ、違くね? .
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