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「じぃん。俺の敵、とって!」
カズヤにせがまれ、彼女に良いとこ見せなきゃな…と、おじさんに乗せられ。
「よしっ、任せとけ」
気付けば、結構な散財をしていたけれど。
本当に嬉しそうにカズヤが笑うから、気にはならない。
「そろそろ花火始まるし、食い物買って移動しようぜ」
「うん。じゃあ、唐揚げとー…」
両手いっぱいの景品と、同じく両手いっぱいの食べ物。
唐揚げに始まり、焼きそばやら、リンゴ飴やら、かき氷やら。
屋台に出されている大方の物が、カズヤの手中にあると言っても過言ではない。
「カズヤ、こっち」
そんな大荷物を抱えたまま。人波に逆らうと云うのは、中々大変なもので。
はぐれないよう後ろを気にしながら、歩を進める。
「じーん、どこ向かってんの?」
「秘密の場所」
花火が見れないんじゃないかと、心配するカズヤを引き連れて。
訪れたのは、祭会場から少し離れた小さな神社の境内。
秘密の場所っつーか、穴場なんだよ。
荷物を置き、きょろきょろと辺りを見渡しているカズヤを誘導するべく。
暗がりの中、そっと腰に手を添えた。
「おいで。足元、気をつけろよ」
カズヤの両手が埋まっていたから、そうしたまでで。
特に、他意はなかったのだが。
「ここ、すげー真っ暗だね…」
大人しく俺の腕に収まり、少し不安そうな上目遣いの瞳に。
薄い生地越しの肌の感触に、どくんと鼓動が跳ねる。
一度、色欲を感じてしまえば、もうそれしか考えられなくて。
はしゃいだせいか、うえだが綺麗に纏めた髪は乱れ、項に張り付き。
しっとりと汗ばんだ質感と、闇と対比する白さにくらくらした。
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