君の風情と僕の色情[AK]

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「ほら。おぶってやるから、荷物全部持てる?」 「うん、ごめんね」 もし俺まで下駄だったら、カズヤを背負って歩くのはしんどいと思ったから。 華奢とは言え、一応男の体だし。 俺におぶられて、視界が高くなった事にはしゃいでいたカズヤが。 「景品は落としてもいいから、お前は落ちんなよ?」 「じん…、お父さんみたい」 当たり前な俺の忠告に、こう切り返す。 前から思ってたけど。俺の立ち位置って、彼氏じゃねーの? まあ、でも彼氏兼保護者みたいなもんか。 「あ、鈴虫鳴いてる。ふーりゅーだね」 うん。風情とか風流とか、無理して難しい言葉使わなくていいから。 さらさらと、夜風が頬を撫でる帰路で。 祭の喧騒も遠くなり、渦中に居たときには気付かなかった虫の音に耳を傾け。 趣を感じてるカズヤには、すっげー悪いんだけど。 一個、確認したい事があるんだよね。 花火を見る前は、俺の妄想かもしれない…と半信半疑だったが。 おんぶと云う体制を取っている今は、ほぼ確定的な事項。 「あのさ。浴衣の下、何も着てないっしょ?」 悪戯心で臀部の下に添えた手を、揉むように動かしてみたら。 「やぁ…。もうっ、じんのえっち!」 ぴくんっと反応を示したカズヤに、頭を叩かれた。 悪かったな、風情がなくて。 幼くて純粋なお前には、解らないかもしれないけれど。 男なんて、みんな狼なんだよ? 「ねえ、カズヤ。帰ったら、それ脱がしていい?」 「んー…、いいよ。脱がしてぇ?」 舌足らず口調から察するに、睡魔に襲われ自分で脱ぐのが面倒臭いのだろうが。? そうやって、さらっと危ない発言するの直せよな。 風情だとか、正直どうでもいいけれど。 無垢な君に免じて、僕の色情は封印しておいてあげるよ。 .
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