君の魔力と僕の友人[AK+α]

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「えー?じゃあ、ブランド店でお前と居たってゆー美人は?彼女?」 「それ……多分、この家の持ち主」 歩みを止め、目の前の扉を指差しながら、弁明したのだが。 予想はしていたが、嘘つけ!と一蹴され、全く相手にされなかった。 それもこれも、ぱっと見なら女の子に見えてしまう、うえだのせいだ。 まあ、私物でも見せれば納得してもらえるだろう。 見た目に反して男前な同居人に、バレないようにしなければ…。 そう思いながら、鍵を回し扉を引いた刹那、黒ずくめのもこもこしたモノが懐に飛び込んできた。 「じんっ、Trick or treat!」 頭にぴょこんと立った耳、ピンク色の肉球の付いた両手足、太股まである靴下。 俺のを着ているせいで肩からずり落ちそうなニットに、そこから垂れる細長い尻尾。 黒猫か。その絶対領域が、目に眩しいぜっ。 「ねー、トリック……って、お客さん?」 ……じゃなくってぇぇ!しまった、今日はハロウィンだ。 おおよそ予測などしていなかった出来事と、可愛いすぎるカズヤのコスプレ。 それに因って対応が遅れた結果、引き起こったのは。 「まさか、お前が幼女を囲ってたとは…っ!」 閑静なフロアにこうきの声が響き渡ると云う、最悪の事態だった。 「ようじょ?ねー、ようじょって何?」 聞き慣れない言葉に興味を持ってしまったカズヤと、新たな誤解を抱いたこうき。 その二人を扉の内側に押し込め、深く溜め息を吐く。 「じん。俺、お茶淹れてくるね」 俺の気苦労など知らず、こうきにスリッパを差し出した後。 ゆらゆらと猫の尻尾を揺らしながら、意気揚々とカズヤは台所へと駆けていった。 「あー…、えーっと、あいつはその……」 あのコスプレとスキンシップじゃ、親戚の子ってのは通用しないだろうなぁ。 そうだ、帰国子女ってコトにすればいい。 男だってのは喋ってれば解るだろうし、我ながら妙案だとほくそ笑んだ所に。 「忘れてた。じん、おかえりのちゅう…」 スキンシップでは片付けられないキスを、和也に仕掛けられる。 あーあ……ダメだ、こりゃ。 一通り俺の口腔内を堪能して満足したのか、濡れた唇に緩やかに孤を浮かべて。 カズヤは、リビングから再び台所へ戻った。 その一部始終を眺め、ひゅうっとからかいの意を込めて口笛を鳴らすこうきに。 .
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