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「……なぁ。自分の部屋、帰れば?」
だから、この状況は非常にマズイ。
綺麗な項を丸見えにさせて、悠々とベッドで寛ぐかめは。
別に何をする訳でもないのに、何故だか俺の部屋に居る。
「やぁだ。まだ眠くないもん。一人で居ても暇だしさー…、ね?」
なぁにが、ね?だ。可愛く言えば、許されると思ってんなら…。
「じゃあ、もう少ししたら戻れよ?」
「うん。そうするー」
その通りだよ、ちくしょう!
「なかまるって、優しいから好きっ」
「そりゃ、どーも…」
無関心を装って、ベッドの端に腰を下ろした背中に感じたのは。
微かな衣擦れと、遠慮がちに縋り付いてくる指に。
「…ほんと、優しい。たっちゃんは、幸せだね」
感情を圧し殺そうとして、少しだけ震えた声色。
本当はさ、薄々気付いてたんだ。
無理をして、高めのテンションを保っている意味も。
一人になりたがらない理由も。
「かめ。どうせなら、顔見せてよ」
「……やだ」
かっこつけでスターなくせに、意地っ張りで寂しがり屋で。
魅せ方を知っているくせに、甘えるのが下手で。
「やだとか、無理だから」
お前はいくつの仮面で、俺を煽れば気が済むの?
強引に正面から抱きすくめたかめは、今にも泣きそうなのに。
唇を噛み締めて、決して涙を見せまいと耐えていて。
こいつが素直に泣ける場所が、あいつの胸だけだと思うと。
正直、悔しい…とさえ思う。
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