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「はぁ…っ。なかまる、なかまる…ぅ!」
今まで頑なに、伸ばされる事のなかった腕が。
するりと首に絡み付き、啜り泣くような声が鼓膜に届いた。
首筋を擽る髪に指を差し込み、くしゃりと掻き乱すと。
俺の胸元に埋められたままの肩の震えが、大きくなっていく。
「かぁめ。我慢せずに、泣いていいよ」
うん、やっと見れた。お前が、素直に泣きじゃくる姿。
ねぇ…、あかにし。
いつまでも自分だけのモノだなんて、過信しない方がいいんじゃね?
「ごめ、んっ。なかまるぅ…、俺さ、俺…っ」
「うん。話さなくていいから、気が済むまで泣けよ」
鼻も目も赤くして、涙でぐちゃぐちゃに濡れたかめは。
今までで一番ブサイクで、スターオーラなんか皆無に等しいのに。
どうしようもなく、可愛くて。
「俺の前では、無理しなくていいから」
たつやに対する愛情とは、また違う種類の愛しさを感じた。
言うなれば、庇護欲。
「…うん、ありがと」
甘やかして、可愛がって…、守ってやりたい。
かめがそんな扱いを望んでいない事は、重々承知しているけれど。
恐らく、こんな風に思っているのは、俺だけではないだろう。
多かれ少なかれ、かめに関わる誰しもが、内に秘めている感情。
ストイックに、何に対しても頑張りすぎるかめは。
誰かが支えてあげないと、壊れてしまいそうな危うさを醸し出しているから。
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