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「…んで、だよっ!あかにしに、遠慮でもしてんの?」
ムッカつく。あいつの事なんか、忘れさせてやるし。
どうやって啼かせてやろうかと、目論見を働かせて。
「違ぇし、じんは関係ない。その…、なかまるが」
「俺がなに。はっきり言えよ」
お預けを喰らわされたせいで、語気を荒げていた俺に。
耳まで薄らとピンクに染め上げて、チラチラと視線を彷徨わせたかめが。
「今日のお前…、かっこよすぎてダメ。調子狂う」
もごもごと、口籠もった声で呟く。
バカにしてる?俺がかっこよかったら、調子狂うってなに。
「だって、このままだと……。本気になっちゃいそうなんだもん」
腑に落ちていなかった処に、追い撃ちを掛けてくる声は。
数時間前に、耳元で囁かれたパフォーマンスに酷似していて。
じぃっと見つめてくる双眸も、お得意の上目遣いで。
「だから、今日はおしまい」
「……分かった」
散々煽っておいて、最後の最後で可愛らしく此方を躱してしまう様は。
いつの間にか、普段のかめだった。
チッ。こいつの仮面を剥ぐのは、やっぱ一筋縄じゃいかねーか。
「じゃあ、そろそろ戻るわ。なかまる、どーいてっ」
何事もなかったかのように、覆い被さっていた俺を押し退け。
ぴょんっと軽い身のこなしで、ベッドから降りると。
「みっともないトコ、見せちゃったね」
涙の痕跡を残したまま、かめは鉄壁のアイドルスマイルを浮かべる。
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