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「強く言ってすみません。部長、まだお店にいらっしゃいますか?」
「いや、店は出た。そう遠くはないだろ?俺が向かうよ」
志乃は今いる場所を告げ、部長の言葉に甘えることにした。
部長を待つ間、バーでの会話がリフレインする。
眼鏡がないだけで、こんなにも不安になる。
「もう限界だろ?」
そう言った部長の言葉。
正直、誰かに寄りかかりたくなる時もある。
でも、またダメになるかもしれないと、臆病な自分が歯止めをかけ、ますます仮面を強化してきた。
離婚して以来、こんなに弱気になっているのは眼鏡がないせいだろうか?
志乃は、ネオンが邪魔する何もない夜空を仰ぎ、目を瞑った。
どれくらいそうしていただろうか。
急に後ろから抱きすくめられ、その綺麗な手は志乃の顔に眼鏡をそっと戻した。
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