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添田の背中を見届けた志乃は、深い溜め息をつきながらソファへ深く沈み込んだ。
「駆け引きって、やっぱりめんどくさい・・・」
相手の顔色や態度を、相手の言葉なくして読み取らなくてはいけない、30過ぎの恋愛事情。
中高生のように、ストレートな恋愛ができなくなるのは、いつからなんだろう。
好きなものを好きと言える素直さ。
そんな大切な感情を、大人になるにつれて、何処かにおいてきてしまうものなのか。
漠然とした不安にさらされながらも、そんな大人になってしまっていることに少し笑が込み上げる。
こんな駆け引きをするようになってしまった自分も、大人になったということか。
この後起きるであろう情事も、そんな大人になったから、こうも上手く自分の気持ちを隠しながら対処できるのかもしれない。
そう、今夜だけ。
明日からはまた、いつもの自分に戻る。
戻るんだよ、志乃。
そう冷静に、自分に言い聞かせた。
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