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「もう、ほんとにやんなる」 言うことを聞かないヘアアイロンを諦めた志乃は、バッグを肩にかけマンションを出る。 「今日は朝一で会議か…」 志乃が主任を務める商品企画部と、営業部との合同ミーティングの日だった。 営業が取引先で受けてきた商品の感想やクレームを企画に上げ、更なる商品発展の糸口を見つけ合うという、ある意味なすりつけ合いな会議だ。 ことに、志乃は営業部のメンツが苦手だった。 言葉巧みで、ちょっと隙を見せると猫のように懐へ入ってくる、あの軽々しさが今の志乃にとって一番の天敵。 ちょっと甘い言葉でも掛けられたら、懐へ入ってきた猫に甘えてしまいそうになる自分がいることにも腹立たしい。 自分の中で、心身のバランスが取れなくなっていることに苛立ち、誘惑には絶対負けちゃダメと言い聞かせる日もある。
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