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通勤電車に揺られ、人並みに流される様に会社へたどり着く。 まるで、自分の意思はお構いなしに押される様に。 駅近くの大きなビル。 IDカードを通し、フロアの廊下を歩いていくと、見慣れた顔が通り過ぎていく。 「主任、おはようございます」 すれ違う面々が志乃に挨拶をする。 「おはようございます」 志乃は部下にも敬語を使う様にしている。 それも仮面の一つと考えている。 フランクな感じで話した途端、仲良しな雰囲気を醸し出す、そんな関係性は志乃にとって不必要すぎる。 自分のデスクに着いて、しばしの安堵感。 部署内はパーテーションで区切られており、志乃はこのプライベート感がたまらなく好きだった。 仕事には集中できるし、ちょっと疲れた時にも背伸びをしてリフレッシュできる。 ただし今日は会議の日。 いつまでも浸ってるわけにもいかず、会議資料の準備を始めた。
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