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ふわりと差し出された、白くて指が細くて‥でも男らしい手。
その手にそっと自分の手を重ねると、ぐいっとたたされた。
「あ、りがとうございます‥っ/」
「いーえ。」
にこりと優しく微笑んだその先輩は、まるで王子様。
少しパーマのかかったふわふわの黒髪に白く透き通った肌。二重でぱっちりした目に高い鼻、そしてふっくらした唇。
背が高く、意外と広い肩幅と背中。第一ボタンは外され、首もとにはネックレスがしてあった。
「こいつは伊野尾慧。この高校一番の秀才で王子様っぽいけど‥‥」
言葉を濁し、苦笑する兄ちゃんを見つめれば、いずれわかる。とまた俺の頭をなでた。
───‥あれから約半年。
伊野尾先輩や光くんと仲良くなり、あだ名をつけられたり勉強を教えてもらったり。
努力の甲斐あって、見事に合格。
俺は伊野尾先輩を忘れられなくて、この高校に入った。
サークルなんて入らない。
兄ちゃんが輝いた生徒会で、
「次は俺が輝くっ!」
目の前には生徒会の扉。
ゆっくり開いて顔を覗かせると、慌ただしく動く薮くん達がいた。
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