序章 密音

4/10
前へ
/28ページ
次へ
他者を批判している者が居れば、必死にどちらが悪いか親身に考えた。 誰かが亡くなれば、その悲報に胸を痛めた。 他人の無念を感じれば、その者の代わりに敵を呪った。 そんな俺でも、そいつらと同類に堕ちてしまった。 そこまで腐ってはいなくても、結局無関心になると言う事はそう言うことなのだろう。 「……生きた年数より、考えた年数」 無駄に生きていても、全く持って意味が無い。 一つ一つの事象に対して、考え、悩み、そして答えを導き出す。 その工程から目を背けていては、人は人を幸せに出来ることはあり得ない。 「……はぁー……」 憂鬱な気分になりながらも、やりきれない気持ちに包まれる俺。 しかし、周囲の人間は違った。 嬉々としてチョコレートを貰えるか貰えないかと無駄な論議に時間を費やし、 チョコレートを渡そうか渡さないでおこうかと、空白の時間を過ごしている。 そんな時、俺は密音と出会った。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加