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そんな猫の目が、突然こちらへ向けられた。
「……わたしの顔に、何か付いてる?」
か細いながらも澄んだ声で、囁くように真帆は問う。
「え? いや、別に何も……」
「……ふぅん」
真帆は咎めるでもなく視線を転じると、疲れた溜息をついた。
「休憩にしようか? 根を詰めすぎるとかえって良くない」
「……じゃあ、休憩する」
そう言い残して、真帆は席を立った。
彼女の背中を見送りながら、こっそり溜息をもらす。
遠藤真帆と会話するのは初めてに近い。いつも無口で無表情で無愛想、そんな彼女と共同で課題をすることになった時は……試練を意識した。
共通の趣味があるわけでもないので、話は盛り上がらない。必然的に、話題は課題のことだけになるのだ。
だから、眞柴と鳥原が羨ましかった。仲が良いかは知らないが、少なくとも気まずさは窺えない。
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