タイトルのない日常

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移動中、真帆の背中を見つめながら、どう会話を切り出そうかと思案する。 話が合わなければ、歩幅も合わない。一緒に休憩するなら、普通は肩を並べて歩くだろうし、談笑したりもするだろう。 しかし、真帆は意外にも軽い身のこなしを発揮し、遠ざかるようにスタスタと前を歩いていく。 なんだか、逃げる猫を追いかけるような錯覚に陥ってしまう。 「なあ、どこまで行くつもりなんだ?」 呼びかけると、真帆はくるりと振り返った。 「決めてないけど……」 当たり前みたいに真帆は言う。そんな気まぐれなところも含めて、猫を連想させるのだろうか。 「だったら、散歩がてら休憩しよう。行くあてはないんだろ?」 「……うん。任せる」 受け答えまでの“間”が、心の距離なのだろうか。警戒しているというか、言葉を選んでいるように見える。 だとしたら、互いに気まずい。 何か、盛り上がるような話題はないものか。
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