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まあ、そんな事はさておいて。 五十嵐は最悪逃げようと思っていた筈だ。でも、逃げ出そうにも、これだけのメンバー相手じゃ無理だ。 たぶん、無理だ。 それは五十嵐も充分に理解したようで、諦めと何か別の感情を含んだ顔で笑っていた。 複雑な笑顔だった。 「来たみたいね。それじゃ、お願いね。うさみん」 会長が言うと、宇佐先輩がパチンと指を鳴らした。 がしゃーん、と言う音と共に世界が割れて、割れる前と全く同じような世界が眼前に広がる。 クラブ活動の為かグラウンドを走り回っていた生徒達、校舎内に居残っている生徒達、家路に着こうと学校から去る生徒達、そのすべてが消える。 宇佐先輩の“範囲収束(アトラクタフィールド)”、世界を否定、拒絶した彼女の能力。 この世界には“僕達しか居ない”。 「さて、始めましょうか」 「ちょっと良いかなぁー!?」 会長がこの能力検定を始めようと言うと、ぴんっと右手をヒミコが上げる。 ん? 何だろう、ヒミコはあの人達に面識は無い筈だけど。
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