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道中、沙夜がため息混じりに言う。
「一体何の用なのかしら? はっきり言って、不愉快だわ」
理由も告げずに呼び出しなんて。と、心底不機嫌そうに。
と、言っても沙夜は無表情で、口調も単調で、感情を一切込めていないのだけれど。
しかし、今はかなり怒っているようだ。
最近の僕は、沙夜の感情の機微が読み取れるようになってきていて、すごく嬉しいのだけど。
でも、怒っていたり、悲しんでいる沙夜は出来る事なら見たくない。
「もうすぐ一学期も終わるし、何かと忙しいみたいだね。生徒会」
「また勧誘? だったら帰りましょう。律儀に呼び出しを応じる必要は無いわ」
と、僕の手を引いて反対方向へ歩き出そうとする沙夜。
「待ってよ、沙夜。“勧誘とは関係ない大事な話”って言ってたし、訊くだけ聞いておこうよ。別にこの後に用事がある訳でもなし」
「用事、ならあるじゃない。忘れてしまったと言うの?」
「え? そうだっけ?」
沙夜との約束を僕が忘れるなんて、そんなことは無いはずだけれど。
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