41人が本棚に入れています
本棚に追加
どたばたと、近所迷惑甚だしい騒ぎに発展してしまった。
それでも。
神楽を押さえ付けて、ソファーに押し倒すみたいな事になっていない。
頬を上気させて、互いに呼吸が乱れたままに見つめ合ったりなんてしてない。
「……いいよ、ゆとり君……ん」
僕に押さえつけられた神楽が目を閉じて、唇を尖らせて――
とか、そんな展開は全く無かった。
これっぽっちも無かった。断じてなかった。
とりあえず、本日この日神楽と僕は、久しぶりに二人で雑談をして、お互いの距離感を測り合った――のだろう。
コーヒーを飲み終えて、僕は神楽の家を出た。
思ったよりも遅くなってしまったらしく、影が随分と長く伸びていた。
そう言えば……と、ふと思い出す。
以前、五十嵐とヒミコが“家の用事”と言って早く帰った日があった。
あの日、確か僕は、正確には僕と沙夜は“殺人鬼”に出会ったような気がする。
最初のコメントを投稿しよう!