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学校への道のりは、とても短い筈なのに今日はとても長く感じた。 それなのに、いつもよりずっと早く着いてしまった。 夏の日差しが強い、今日も朝から暑くなりそうだ。なんて、暢気な事を考えながら、教室の扉を開けて―― 「おはよう……ございます」 そこは教室では無かった。 久しぶりに招かれたらしい。初めて招かれた日はとても驚いたものだったけれど、非日常なんてのは慣れてしまえば日常と変わらないな。 「おや? ゆとり! 久しぶりと言うほど久しぶりでは無いんだけどネ、久しぶりだネ!」 部屋の中にいた大きな三角帽子をかぶり、ぶかぶかの白衣を羽織って、乗馬用の鞭をぶんぶんと振り回す少女が、大きく深遠な黒い瞳で僕を捉えて離さない。 敷戸 曲(しきど まがり)先輩。 超常現象研修会副部長で、“久遠”の魔女。 ぴょこぴょこと跳ねるように近づいてくる。いちいち仕草が可愛らしい、けれど。 相変わらず……鞭が怖い!
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