008

7/15
前へ
/300ページ
次へ
くるん、くるん、びしぃっ! マガリは手を天井に向けて伸ばし、頭の上で円を描いてから、僕に向かって鞭を振り下ろした。 目の前に鞭を突き付けられて、僕は固まってしまう。 こわいって! 「ゆとり、もし過去に戻れたら、もし時間を遡れるとしたら、キミは何がしたいんだネ? 後悔している事無いかネ? やってしまって後悔している事、やれずに後悔している事」 いつもの雑談の一環だろうか。それにしてはいつもよりも真剣な表情のマガリ。 マガリは「戻れたら」と言った。「行けたら」ではなく。 つまり過去の偉人や恐竜を観に行くみたいな、所謂、時間旅行では無いのだろう。 あくまで、僕の過去に戻れたら……か。 「うーん、後悔ね。いつもしているよ。今日だってもう少し早く起きていれば、妹に踏み付けられることも無かったし。後悔しない人間なんて居ないさ」 朝の出来事を思い出しながら、肩を竦める。 僕の回答の続きを待っているのか、マガリは僕を見つめたまま、何も言わない。 吸い込まれてしまいそうなほどの澄んだ瞳で。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加