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くるん、くるん、びしぃっ!
マガリは手を天井に向けて伸ばし、頭の上で円を描いてから、僕に向かって鞭を振り下ろした。
目の前に鞭を突き付けられて、僕は固まってしまう。
こわいって!
「ゆとり、もし過去に戻れたら、もし時間を遡れるとしたら、キミは何がしたいんだネ? 後悔している事無いかネ? やってしまって後悔している事、やれずに後悔している事」
いつもの雑談の一環だろうか。それにしてはいつもよりも真剣な表情のマガリ。
マガリは「戻れたら」と言った。「行けたら」ではなく。
つまり過去の偉人や恐竜を観に行くみたいな、所謂、時間旅行では無いのだろう。
あくまで、僕の過去に戻れたら……か。
「うーん、後悔ね。いつもしているよ。今日だってもう少し早く起きていれば、妹に踏み付けられることも無かったし。後悔しない人間なんて居ないさ」
朝の出来事を思い出しながら、肩を竦める。
僕の回答の続きを待っているのか、マガリは僕を見つめたまま、何も言わない。
吸い込まれてしまいそうなほどの澄んだ瞳で。
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