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「『宵闇 満月(よいやみ まんげつ)』覚えてる?」
一息つくように、お茶を啜ってから訊ねられる。
忘れる筈が無い。忘れたいと願っても頭から離れない名前。
沙夜を想う度に、ちらつく不快な名前。
「……覚えています」
一言返すのが精いっぱいだった。
僕の心情を汲んでくれたのか、少し申し訳なさそうな顔をする伯母さんだったけど。
「そう、それなら良かった。じゃあ、彼がこの町に来た理由は? 覚えてる?」
続けて、質問を投げかけてくる。
不快な思い出を呼び起こし、彼の言動から答えを導く。
確か――「……沙夜を連れ戻す為?」と僕は記憶を統合し、答えた。
「そう、その通り。彼は沙夜ちゃんを連れ戻す為にやって来た。では、それは何処へ? 沙夜ちゃんの戻るべき場所って何処?」
続けて質問される。
沙夜の戻るべき場所? それは……。
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