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分らない。悔しいけれど、僕には分からなかった。
出来れば沙夜の居るべき場所は僕の隣であってほしいと思うけれど、沙夜が何処から来たかなんて、考えた事も無かった。
無言の僕にしびれを切らしたのか、伯母さんは肩をすくめて、やれやれと呆れるように答えを言う。
短気過ぎない?
「あー、分んないか。分かんないよね、沙夜ちゃんがちょっと自分に懐いたくらいで、興味を失っちゃう程度の君にはさ。満月くんは沙夜ちゃんを家族の元に連れ戻すつもりだったの」
凄く心外な事を言われたけれど、僕は言い返せなかった。
それに、伯母さんはそれ以上に気になる事を言った。
「家族?」
「正確には、“父親”のところ」
“父親”、確か沙夜曰く『最低の最悪男』。沙夜を“出来損ない”と呼ぶという父親。
人を呼吸するように殺す男。
「まあ、あの男が沙夜ちゃんを連れ戻すように命じた訳じゃないみたいだけどね。満月くんが来たのは、彼の独断専行。彼にとって沙夜ちゃんは大事な大事な花嫁さんだもん」
だったら、沙夜を匿う必要なんて――と、僕のそんな甘い思考を先読みしたらしい伯母さんは続ける。
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