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家を飛び出した僕は、エレベーターを待つなんて悠長な事はせずに、階段をまるで転がり落ちるように駆け降りて、エントランスで―― 途方に暮れた。 階段を駆け降りている時点で気付いていた事だったけれど、あまりに勢い良く飛び出してしまった所為で“ある問題点”を解決するタイミングを失ってしまった。 「あぁ、しまった……五十嵐の家の場所……僕知らない……」 文字通り、頭を抱えた。 真理伯母さんに訊く、という選択肢も無くは無いのだけど、でも、今から訊きに戻ったら、多分、伯母さんは烈火の如く、猛火の如く怒るだろう。 それは嫌だ。 僕は叱られるのは嫌いじゃないけど、怒られるのは大嫌いなんだ。 どうしようか、と考えているとケータイが鳴る。 どうやら、電話がかかって来たらしい。
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