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ポケットからケータイを取り出して、ディスプレイを恐る恐る確認すると。
五十嵐、と表示されていた。
ほっとした。もしかしたら、真理伯母さんからのお叱りが来るかもなんて、考えていたから。
通話ボタンを押して、電話を受ける。
「はい、お待たせしました。最上です」
『ゆとりか? 五十嵐だ。今どこに居る?』
少し慌てているような声音で、五十嵐に訊ねられた。
「今、マンションのエントランスに居て、五十嵐に会いに行こうかと思ってたんだけど」
『そうか、分った。そこを動くな。すぐに行く――』
色々疑問はあったけれど、訊くまでも無く通話はそこで切れた。
不思議な感覚だった。僕の知らないところで、話が(伯母さんが言うには“物語”か)進んでいくような、トントン拍子というか。
五十嵐が来るまで、どのくらい時間がかかるのか見当もつかないけれど。
僕はエントランスから出て、夏の日差しに目を眩ませながら背伸びをした。
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