009

28/35
前へ
/300ページ
次へ
「え? 待って、待ってよ。五十嵐、どうして?」 「“どうして”だと?」 五十嵐が怖い、そんなに睨まないでよ。 「“どうして”? 分らないか? 分らないのか? なら、もう一度だけ訊く。お前は――」 “あれ”を見てどう思う? あの不思議生命体の残骸を指差して、苦々しい表情で僕に訊く。 僕は―― 「汚い、とか。後片付けが大変? とかかな?」 正直、五十嵐が求めている答えが分からない。 だから、僕は素直に思っている事を口にした。 でも、五十嵐はまるでこの世の終わりみたいな顔をする。 まるで信じていた親友に裏切られたような、そんなむしろ泣き出しそうな顔で。 「俺は、お前の事気に入ってた。でも、今はただただ、恐ろしい。俺はお前が怖い。あんな死体を見て、俺ですら吐き気を催す程に凄惨な死体を見て、平然としているお前が、俺は正気とは思えない。俺は……お前に“闇憑き”になってほしくなかったし、今だってなって欲しくない。だから――」 俺はお前の邪魔をする。 と、五十嵐は僕に背を向けた。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加