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「久しぶりだな、我が半身“煉獄の劫火”。元気そうで何よりだよ」
時期外れに転校してきた少女はそう言った。
多分、いや確実に僕に向けてそう言った。
ニヤニヤと笑いながら、それでいて慈しむ様な視線を向けて。
嬉しそうに、心底嬉しそうに笑う。
まるで“かつての僕”のような口振りで、かつて空白だった少女は。
そんな彼女は、僕に向けて言う。
久しぶり。と。
彼女が転校してくるということを僕は知ってはいたけれど、それでも僕は動揺を隠し切れずに(覚悟が足りなかったのか、しかしそれも違うと思うけれど)緊張からか、身体が固まってしまう。
それでも……僕は少し、ほんの少しだけ……嬉しくて。
そして、少女は……“かつての僕”のような表情で、かつて空白だった少女は高らかに笑う。
それが、とるに足らない何の責任もとれない僕と、かつて空白だった少女との再会だった。
あの時、あの頃、果たせなかった約束を、契(ちぎり)を果たす、そんな物語の始まり。
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