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「五十嵐! 待って! 邪魔をするって何!?」
慌てて止めるけど、五十嵐は待ってくれない。
僕に背を向けたまま――
「宵闇を連中に引き渡す。それが一番良い、現状選べる最良だ」
連中に沙夜を渡す!? あり得ない!
そんなのは最悪の選択肢だよ、五十嵐!
「ふざけるな! 五十嵐ぃ!」
僕は五十嵐に殴りかかった。
けれど、地面に叩き付けられたのは僕だった。
ぐるんと、視界が回転し、気が付いたら僕は仰向けにアスファルトに倒れていた。
叩き付けられた衝撃を受ける責任は、自動的に他所に飛ばしたけれど、僕は茫然と澄み渡る空を見つめていた。
「ふざけてなんていない。勘違いするなよ――俺は……お前が――」
「ぎゃははっ! だっせぇぜ! “ウズツキ”の旦那ぁ、死んだ振りも大概にしとけや! “闇憑きの中で最も人を殺した男”の汚名が泣くぜ!」
民家の上で叫ぶ不審人物が、五十嵐の気になるセリフを遮りながら現れた。
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