009

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「五十嵐! 待って! 邪魔をするって何!?」 慌てて止めるけど、五十嵐は待ってくれない。 僕に背を向けたまま―― 「宵闇を連中に引き渡す。それが一番良い、現状選べる最良だ」 連中に沙夜を渡す!? あり得ない! そんなのは最悪の選択肢だよ、五十嵐! 「ふざけるな! 五十嵐ぃ!」 僕は五十嵐に殴りかかった。 けれど、地面に叩き付けられたのは僕だった。 ぐるんと、視界が回転し、気が付いたら僕は仰向けにアスファルトに倒れていた。 叩き付けられた衝撃を受ける責任は、自動的に他所に飛ばしたけれど、僕は茫然と澄み渡る空を見つめていた。 「ふざけてなんていない。勘違いするなよ――俺は……お前が――」 「ぎゃははっ! だっせぇぜ! “ウズツキ”の旦那ぁ、死んだ振りも大概にしとけや! “闇憑きの中で最も人を殺した男”の汚名が泣くぜ!」 民家の上で叫ぶ不審人物が、五十嵐の気になるセリフを遮りながら現れた。
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