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民家の屋根からブロック塀へひょいひょいと、まるで階段を降りるかのようなスムーズな動きで移動した男は、僕らを否、不思議生命体の残骸を見下ろして―― 「おいおい、マヂに死んじまったのかぁ? “ウズツキ”の旦那よぉ。ったく、勝手におっ死んでじゃあねぇよ。こちとら、あんたを殺せる日を楽しみにしてたってのに」 ぎゃははっ、と品の無い笑い声を上げた。 アーミーブーツにダメージジーンズ、上はタンクトップで、犬の耳みたいに跳ねた赤髪の男。両腕が異様に長い、まるで“別のパーツ”を無理矢理繋げたような長い両腕。その両腕の指先から肩までを包帯でぐるぐる巻きにしている男。 彼は不思議生命体を“ウズツキ”と呼んだ。 最悪の事態、正しくそんな状況だった。 五十嵐を説得しないといけないこの状況下で――『宵闇』の『闇憑き衆』が“増える”なんて。 のそりと、上半身が爆ぜた不思議生命体が――その上半身を起こす。 彼は、死んではいなかった。
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