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両腕に包帯をぐるぐる巻きにした男がその長い右腕をしならせて、引っ掻くように五十嵐へと振り落とし、叫ぶ。
「“神の右手(ゴッドハンド)”ぉっ!」
上半身裸の筋骨隆々な不思議生命体が筋肉を躍動させ、叩き切るようにその手に持つ巨大な刃物を小鹿さん達へ振り下ろす。
僕は地面に寝そべったまま、反転したその景色を、ただ見つめていた。
「そこまでです。」
その声がこの場に響いた瞬間、視界の全てかぴたりと停止した。
聞き慣れない、静かだけどはっきりと響く声。
声のした方に視線を向けると、そこにはこのうだる様な暑さの中を更に暑苦しくするような真っ黒いスーツに真っ白いシャツと黒いネクタイ、白い手袋に黒い革靴、髪型はオールバックで銀縁眼鏡をかけている。
まるで漫画に登場するような執事みたいな恰好をした男が澄まし顔で立っていた。
「貴様どうイうつもりダ」
「こちらが訊きたいですね。一体どういうつもりですか? “この町”では荒事は避けるようにと言っておいた筈ですが?」
「ぎゃはは、荒事? こんなの俺らにとっちゃ、呼吸だろうがよぉ」
「たかが、“殺戮衝動”を、呼吸なんて大切なものに置き換えないでください 」
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