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「全く、貴方達は“あの御方”では無いでしょう」 呆れ顔でそう言って、つかつかと、執事のような男が僕の傍にやってきて―― 「立てますか?」 そう言って、手を差し伸べてきた。 その手を取って、僕はようやく立ち上がった。 深々と頭を下げて、執事のような男が言う。 「連れの者が大変失礼を致しました。わたくし共は決して怪しい者では御座いません。わたくしは『宵闇』に属するもの、『闇憑き衆』が一人、『宵闇 針月(よいやみ はりつき)』と申します。そしてあちらの者が――」 筋肉の塊のような不思議生命体を指して。 「『宵闇 疼月(よいやみ うずつき)』、そしてこちらが――」 両腕包帯ぐるぐる巻きの男を指して。 「『宵闇 咬月(よいやみ かみつき)』と申します。以後、お見知り置きを」 もう一度、深々と頭を下げた。 「えっと、僕は――」 針月さんに倣って、僕も名乗ろうとしたけど。 「『闇憑き衆』、お前達の目的は“『満月』の回収”か?」 五十嵐に遮られてしまった。 「えぇ、満月さんの回収。それともう一つ『姫』の捜索がわたくし共の目的です」 「その二つが済めば、お前達はこの町から出て行くんだな?」
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