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「だったら、邪魔すればいい。俺は譲らない」 そう言って、僕の手を振り払いそのまま踵を返した五十嵐。 彼の真剣な眼差しに委縮してしまった僕は、その背中を呆然と眺めるしかなかった。 しかし、数歩歩いたところで五十嵐は何か思い出したように立ち止まる。 「……五十嵐?」 僕の問い掛けに、足早に戻ってきた五十嵐は―― 「仕事だ。仕事はこなさないとな――別に忘れていた訳じゃない。勘違いするな」 と、ばつが悪そうに僕を睨みつけながら言った。恐いよ、五十嵐。 仕事。というと『五十嵐代行サービス』の事だろう。 五十嵐の両親が経営している会社で、たまに手伝う事もあると言っていたように思う。 「ついて来い。お前に会わせないといけない奴がいる」 「え? 誰? もしかして……沙夜?」 「違う」 即答されてしまった。 何だ、違うのか。と、露骨にがっかりした僕を放置して、五十嵐は再び歩き出してしまう。 「ちょ! ちょっと待ってよ五十嵐!」 僕の制止も聞かないままに歩みを止めない五十嵐を僕は追いかけるしかなかった。
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