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三階のとある一室の前で、五十嵐は立ち止まり――
「ここだ」とだけ言って、カードキーを僕にくれた。
306と扉に表記されたその部屋。
五十嵐は扉を見つめる――と言うか、睨んでいる?
「え? 五十嵐は来ないの?」
「ん? あぁ、いや、そうか。俺も居た方が良いか」
そう言うのが早いか、僕の手からカードキーを抜き取り、カードリーダーに通す。
かしゃん、と言う小気味良い音が鳴り、開錠された扉を五十嵐が開け放つ。
その瞬間、どろりとした空気が部屋から溢れ出した。
五十嵐も感じ取ったのだろう。眉間に皺を寄せて三歩下がる。
今すぐここから走り去りたい。
そんな衝動を必死で抑え付けているように見える。
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