010

6/11
前へ
/300ページ
次へ
僕は五十嵐ほどにこの“瘴気”の影響は直接的には受けないけれど、でも、それでも、僕もここから立ち去りたい。 “この感じは以前経験した事がある” この部屋の中にいる人物に、僕はおおよそ見当がついた。 “だからこそ”、僕はこの部屋に入りたくないし、この部屋の中に居るであろう“あいつ”に会いたくない。 「帰ろうか」 「……駄目だ」 逡巡があったけれど、否定されてしまった。 部屋の前で何時までもこうして二人で突っ立っていたとしても、事態が好転する筈もなく――部屋に入ったとしても好転しない気はしていたけれど、しぶしぶ嫌々ながら僕は部屋に足を踏み入れた。 足が重い、ねっとりと絡みつくような空気が足を重くする。 部屋の中、備え付けの椅子に座って寛いでいる人物。 と言うか、なんでバスローブ姿なんだよ!  不愉快だなぁ!
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加