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そいつは――『宵闇 満月』は、僕を見止めて不愉快な笑みを顔面に張り付けたまま言う。 「あぁん? こいつぁ珍しい来客だぜ。はっ、実に久しいな。“俺の敵”。こんなにも早く再会する事になるとは、夢にまで見たぜ」 「……僕は二度と会いたくなかったですよ」 「ふん、まぁそう言うな。“俺の敵”、俺だっててめぇの面なんざ好んで見ようなんて思わねぇんだからな」 言葉とは裏腹に、と言うかこの空間の中で一番楽しそうな嬉しそうな顔してやがる。 実に不愉快だ。 不愉快で、不愉快で、不愉快極まる。 実に二か月ぶりに出会ったこいつは、相も変わらず不愉快過ぎてうんざりする。 二か月前の騒動の後、五十嵐のお父さんである、『五十嵐代行サービス』代表取締役社長、『五十嵐 雷雨(いがらし らいう)』さんが連れて去ったので、もうとっくにこの町を出て行ったものと思っていたのに。 まだ居たのか、こいつ。
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