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部屋を出ると、見知らぬ女性が壁に身体を預けるようにして腕組みして立っていた。 肩口で切り揃えられた茶髪、鋭い切れ味を持った刃物を思わせる眼つきで、パンツスタイルのスーツを着ているけど、日焼けしているような色素の濃い肌がアンバランスな細見の女性。 どこかで会った事がある様な、そんな気がした。 でも、知らない人だ。誰だろう? そんな僕の疑問はすぐに答えが出る。 「お袋、来てたのか」 五十嵐が背後で、ため息混じりにそう呟いた。 五十嵐のお母さん? 確かに似ている気がする。逆か、この人に五十嵐が似ているんだ。 「当たり前、アレの監視は私の仕事。勘違いしないで、別にサボってた訳じゃないのよ」 と、五十嵐に返した。 あぁ、親子だな、とすぐさま理解出来るくらいの応酬だった。 僕に視線を向けて、五十嵐のお母さんは柔らかな微笑を浮かべた。 「久しぶりね、ゆとりくん。と言ってもあなたは覚えていないでしょうけど、小さい時に会ったきりだもの。改めて自己紹介させて頂戴。私の名前は『五十嵐 安岐(いがらし あき)』。そこの風雨の母親よ」 『五十嵐 安岐(いがらし あき)』 五十嵐のお母さん、安岐さんは僕の小さい時に会っていたらしいけれど、僕は全く覚えていなかった。
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