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「では、行こうか」 そう言って、城島先輩はくるりと反転した。 自宅マンションから、徒歩だと一時間は掛かってしまう距離のある場所。 僕はバスを利用しようと思っていたけれど、車椅子の城島先輩には難しい注文かも知れない。 しょうがない、歩くか。なんて思っていると、バス停で城島先輩が止まる。 丁度そこへ、バスが到着した。 タラップなんて付いていない、普通のバス。バリアフリーがそこまで浸透しているはずもない。 え? 僕はもしかして彼を持ち上げないといけないのか―― ふわり。 音もなく、車椅子が城島先輩を乗せたまま浮き上がり、バスの中に入って行った。 「ん? どうしたんだい? ゆとりくん。聞いていた場所だと、このバスに乗るんじゃないのかい?」 動かない僕を見て、不思議そうにそう訊いてくる。 何を驚いてしまったんだ僕は、知っていた筈なのに。
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