012

9/32
前へ
/300ページ
次へ
「目的がこいつらと同じと言うなら、あなたも満月を回収しに?」 「いやいや、ぼくは満月と同じ理由だったよ。こいつらとも同じだろう? “姫の捜索及び回収”だよ」 “姫”、目的は沙夜か。 そして、こいつは今聞き捨てならない事を言った。まるで物に対するように“回収”だと言った。沙夜を僕から奪うことを、まるで業務みたいに言い放った。 「沙夜は渡さない」 「恐いね。いや、意外だよ。そういう顔も出来るんだね、ゆとりくん。いや、“煉獄の劫火”かな?」 へらへらと笑う。 ようやく、この人に対して感じる違和感の正体が分かった気がする。 この人は、存在が“嘘っぽい”感じがしていた。 喋り方も、笑っている顔も、雰囲気と言うか醸し出す空気みたいなものも、全てが演技みたいな――そんな感じ。 名は体を表す。 どうやら、その違和感は正解だったらしい。 僕の思考を遮るように、「さて」と、そう言って手を鳴らす嘘月。 そして、次に彼はこう言った。 「それでは、“話し合い”をしようか」
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加