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「君の意見は聞かせてもらった。『沙夜は渡さない』か。実に分かりやすく頑なだね。それじゃあぼくは、君が姫を諦めてくれるような情報を提供しなければならない訳だ。ぼくの持っている情報で君が彼女を諦めてくれるかは分からないのだけど、ぼくとしては逆に訊きたいね。何を聞けば、どうすれば、彼女を諦めてくれるだろうか? うーん?」 そう言って、嘘月は何か思案するように首を捻り、腕を組んだ。何と言うか、演技過剰、演出過剰と言えるほどに、“わざとらしい”動きで。 「まず、君は知っているかい? 彼女は、姫は、人間じゃない」 またよくわからない事を言い出した。沙夜が人間じゃない? “悪”だとでも言いたいのか。まあ、沙夜は天使だけども、そう言う事じゃないのだろう。 「君が信じられないって顔をする理由も分かるよ。でも、これは事実だし、変えようもない真実だ。彼女は人間じゃない。人と全く変わらない姿で、思考も人間のそれと遜色ないだろうけれど、遺伝子レベルで人間とは全く違う生き物だ」 遺伝子レベル――んー、変な話になってきた。頭がこんがらがる。
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