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「君が彼女に惹かれる理由もこれで説明できる。君が彼女に抱く感情は、決して恋愛感情なんかじゃない。言わば、“憧れ”に近いものだよ。人よりも上位にいる存在を前にしてはしゃぐ子供の好奇心に過ぎない」 僕の沙夜に対する感情をそういう風に否定されて、僕は――反論出来なかった。 もちろん、沙夜が人間じゃないなんて、そんな馬鹿馬鹿しい話を信じるつもりはさらさらないけれど。まあ、沙夜は天使だけども、いや女神? 「人よりも上位、それは神様って事ですか?」 「神様、ね。まぁ近からず遠からずってとこかな。確かにぼくらにとって、それに近いかな。信仰の対象としては、ね」 信仰の対象、そう言った。殺人鬼になった彼らにとって、生まれながらに殺人鬼であると言う沙夜は、姫なんて呼ばれて祭り上げられてしまっている彼女はそういう立場になるのだろうか。 「――だから、いくら君が彼女を思おうと、慕おうと、愛そうと、彼女には決して届かない」 だから、諦めろ。 最後の一言まで、嘘っぽい、作り物の様な口調で言う。
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