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そんな事で僕が諦めると思っているのか。 そんな事が僕の諦める理由になると思っているのか。 「沙夜が何であろうと、僕の気持ちは変わりません」 「ふーん。まぁ、彼女が殺人鬼と知っても傍に居る君がこの程度の事で諦めると思ってはいないよ」 へらへらと笑う嘘月。もしかして、さっきまでの話は嘘だったのかも知れない。 「じゃあ、こういうのはどうだろう? 君は今、姫の事を好意的に思っているみたいだけど、“いつまで”その気持ちを持続出来るものなのか。今、高校一年生の夏休みだろう? 来年は? 再来年は? 高校卒業して、大学に入って、就職して――未来永劫とまでは言わないにしろ、君は死ぬまで彼女を想い続ける事が出来るかい?」 出来る、と言い切れる。今なら。 しかし、そんな事まで考えていなかったのは事実だ。 僕はただ、“今”沙夜を失いたくない。 一時の感情に流されている。と、嘘月は言いたいのだろう。 それでも、僕は――
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