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「君の能力は『無積人(ノーレート)』と呼ばれる類の能力では無い。と、ぼくは思う。真実は違う。恐らく、“似たような”事が出来る能力なのだろうけど、その上の次元の能力じゃないのかい? 多分、君には“選択肢”があるんだ。その身に降りかかるあらゆる事象を無力化したりしなかったりとか……無力化しない理由が分からないけれど」 的外れだけど、大きくは外していない……。 かつての僕は、責任を取る事も厭わなかった。他人が負う筈だった責任を自分に移していた。 “それ”が“煉獄の劫火”の『燃え移る責任(イグニットレスポンシビリティ)』だった。 今の僕は――何の責任も取れないけれど。 「まぁいいや。ごちゃごちゃ考えてもしょうがないよね。じゃあ――」 ゆっくり死んで逝ってね。 そう言って、嘘月が右手を僕に向けた瞬間、僕の視界を炎が埋め尽くす。   赤い、紅い炎。 純粋な殺意の炎。 不覚にも、僕はそれがとても綺麗だと思ってしまった。
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